3
やさしくて綺麗で、しっとりと嫋やかで。
とはいえ、ただただ頼りないほどまろやかでもなく、
玲瓏にして透徹、澄み切った冴えと知性も持ち合わせ。
身だしなみは勿論のこと、
姿勢や態度へもしゃんと芯が通っていての強靭さを持つ、
頼もしいまでの しっかり者で。
賢いのが嵩じてか、時々 頑固頑迷で、
何でも背負ってしまう、気負ってしまうところが
水臭いと思ったし、何とも歯痒かったけれど、
とはいえ、私では頼りにならないんだってこともすぐに判って。
どんなに気を揉んでも どうにもならないと判るからこそ、
それが一番に寂しかったかなぁ…。
そろそろ遅い刻限となり、卓袱台の上を片付けてから、
キッチンスペースへ立って行ったブッダだったのが
何とはなくの合図となっているものか、
イエスが卓袱台を畳んで片付け、押し入れを開く。
そのまま布団を敷きつつの ふと、
何か ブッダの知らない歌をハミングし始めていた彼であり。
夜更とはいえ、ずんと遅い時間でもなし、
どこかご近所からはテレビの音だってするほどで。
それへ重なっては聞こえなくなるくらいの
それほどご迷惑にもならないだろうボリュームでもあったので、
ブッダも注意しようとまでは思わなかった。
むしろ、
“相変わらずにいいお声だなぁvv”
知らない歌でも聞き惚れて後追いしちゃうものね。
でもこれって、どこかで聞いた覚えはあるのにな。
イエスの奏でようや音程がおかしいということじゃあないみたいで、
ちょっぴり切ない曲調を追い追い、
何て曲だっけと えっとえっとと思っておれば、
こ〜い〜は、みずい〜ろ〜、と
そこだけ歌詞を紡いだ彼だったので、
ああと やっとタイトルに思い当たる。
他の歌詞の部分もさあっと浮かび上がり、
ついでに 陽に照らされた目映いほど白い砂浜と
そこへ打ち寄せる細波を運び来るエメラルドの海とが、
何かのPVみたいに脳裏に広がりまでする。
恋は水色、向かい合う空と海の色だと、
ロマンチックに歌い上げる、結構有名な歌。
歌詞が曖昧でも構わず口ずさむイエスだったのへ、
ああ、こういうところが良いんだよねvvと、
自然と口許が綻んでしまったブッダだったのに気がついたのか、
「あ、や〜だなぁ。///////」
それほど音痴じゃないでしょ?なんて、
恥ずかしそうに微笑って的外れなことへ照れてしまう彼なのへ、
「うん、聞き惚れてた。」
ふふと笑い返して差し上げて。
窓に眸をやり、薄めに開いてる分を残してカーテンを引き、
さほど汗をかいてもないからと、
このところの常となってるそのまんま、
特に着替えることもなく、
それぞれの布団の上へ居場所を落ち着ける…ところなのだが
「…隙あり。」
「わっ。」
先に座り込んでいたイエスが、
悪戯っ子そのままの口調で言って、
あとから腰を落ち着けかけたブッダに え〜いと飛びつくのも
実は結構よくある流れだったりし。
どこかへ出掛けていての興奮覚めやらぬときとか、
逆に一日じゅう家にいて、気分的に持て余しているときとか。
必ずこうだという下敷きはないも同然の悪ふざけ。
ブッダの側も、本来なれば微動だにせず受け止められるのに、
わあ何するのーという彼なりのノリでもて、
一緒に倒れ込んでしまう“お付き合い”をしてくれて。
今宵も 特に抗う理由も無しと、
やや正面から飛びつかれたそのまんま、
布団の上、向背へと倒れ込めば。
室内を照らす電灯を遮って、
イエスの肢体や顔がブッダの視野をすっかりと覆う。
とんと突いたのは最初だけ、
その手はブッダ自身を避けて、肩先や二の腕のそばに突かれており。
胸元や腰あたりも、一緒くたに倒れ込んだ一瞬こそ重なったものの、
押し潰さぬよう踏み付けないよう、
素早くまたぐ格好になる反射は いっそ大したものかも知れぬ。
腕の尋だけという距離を残した間近になったと、
今更 意識したものか、朗らかだったお顔が不意にハッとしたけれど。
「…ぶっだ。」
こちらを見下ろす玻璃の瞳が ほのかに細められ、
ねえと切実そうに訴え掛けられては もういけない。
愛しいお人の真摯な表情が
こちらのちょっとした動揺を掬い取り、
がっかりするところなんて見たくはなかったし、
“えっとぉ…。///////”
静かに降ろされた胸と胸とが そおと合わされば、
束縛だ蹂躙だという感触よりも、
温かい慈しみだと思えてやまぬ。
そろそろとその背中へと手を伸ばし、
シャツを掴んで こちらからの“求め”を示せば、
「あ…。/////」
切なげだったお顔がほわりと安堵の笑みを滲ませて。
だのに、そんなあからさまな喜色を浮かべてしまったことへ
他でもない自分で含羞んだものか。
隠れるようにこちらの肩口へお顔をぽそりと埋めると、
そのまま深々と息をつく。
「あ、いい匂いだvv」
「いえす〜。///////」
照れ隠しでもって 人を照れさせないでよと、
抗議のお声を上げたれば。
くつくつ微笑って顔を上げ、
それは優しい眼差しで 愛しいお人を見つめ直して。
男臭さの象徴だろうに、少しも野卑な匂いのしないお髭の下、
口角のはっきりした口許が何かしら囁きながらか、薄く開いたけれど。
「…ぁ。////////」
柔らかな甘い熱がそっと重なり、
こちらを捕まえようとしてか、うにむにと何度も食む仕草を示されて。
時々ふっと浮くように離れては、
右からだったのが左からと、合わさりようを入れ替えられてて。
くちゅくちという水音が立つのが生々しくて、頬へとかっと血がのぼる。
とはいえ、互いの吐息の熱さが一つに交じり合うのを意識するころにはもう、
背中に掴まった手が、もっともっとと相手を掻き寄せていて。
「あ、あ…。///////」
何度目かにこちらの口許から浮いて離れたイエスの唇、
そのまま頬へと逸れてくのにぼんやり気づき、
ああ、そこここ全部を愛してくれるのだと、
とろけそうになった意識の中、うっとり掬い上げたブッダだったものの、
「…ごめん、イエス。」
「んん?」
明かりを、あのあの、消してくれないと、と
掠れそうな声で訴えたことが、今のところ一番に恥ずかしかったのか。
ここまでは清楚にも結われたままだった 釈迦牟尼様の尊い螺髪が、
横になってた布団の上、
その肢体を覆って埋めるほどにも豊かでつややかな髪の海が、
はさりさらさら、一気にほどけてあふれたのでありました。
BACK/NEXT →
*あうう、今日のところはここまででございます。
連休なので、すぐにもUP出来そう、かな?(う〜ん)
もしかせずとも
次は もちょっと不埒な展開になるやも知れませんで。
これ以上の腐描写は だめよダメダメな方は、ここまでで。
めーるふぉーむvv


|